2016.08.05
個人情報の保護について①
Q.「新聞やテレビで『個人情報の漏洩』などのニュースを良く見聞きします。
当社は受注の際に、当社のウェブサイトでの注文・申込や、当社所定の注文書や申込書に、ご本人や担当者の名前・連絡先などを記入して貰うことにしています。
こうした名前や連絡先などの取扱について気をつけることはありますか?」
A.「個人情報保護法の規定やプライバシーに十分に配慮する必要があります。
取扱を誤ると、本人から利用停止や損害賠償請求を求められたり、あるいは監督庁から勧告・命令を受け、場合によっては罰則が科されることがあります。」
何回かに分けて、個人情報の保護についてご案内いたします。
1)個人情報保護法
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)は、個人情報の保護の要請の高まりを受けて、平成15年に制定されました。また、平成27年にも改正がされています。
個人情報保護法では、個人情報を取り扱う事業者に以下のような各種の義務を課しています。これらに違反すると、監督庁から勧告・命令を受け、場合によっては罰則が科されることがあります。
① 個人情報の利用目的の特定
② 個人情報の取得に際しての義務
③ 個人情報の管理における義務
④ 個人情報の第三者に対する提供の禁止と提供する場合の記録作成義務
⑤ 保有する個人情報に関する事項の公表
⑥ 本人からの求めに応じた開示、訂正、利用停止
また、個人情報の取扱を誤ると、本人から損害賠償を求められることもあります。
2)個人情報とは
では、ここでいう「個人情報」とはどんなものを指すのでしょうか。
これについては改めてご説明させていただきます。
また、個人情報を取り扱う事業者に課される上記①~⑥のような義務についても、順次ご説明致します。
2016.06.28
相続争いが生じたら?③(特別受益)
Q.「先日、母が亡くなりました。父は既に他界しており、兄弟は兄と私だけです。
母は自宅を持っていましたが、確認すると、生前に兄に贈与されていたようです。また、兄が結婚した時、盛大な結婚式を挙げてもらい、家を買って貰ったり、また、それ以前にも大学の学費も出してもらっています。
こうしたことは相続の際に考慮されないのでしょうか。」
A.「特別受益」にあたれば、いわば遺産の前渡しをしてもらったものとして、お兄さんの相続分から差し引かれることがあります。
1)生前に被相続人(お母さん)から相続人(お兄さん)が多額の贈与を受けている場合には、相続の際にこれを考慮に入れなければ他の相続人との間で不公平な結果となります。
そこで、お兄さんがこのような「特別受益」を受けた場合には、遺産の前渡しとして、これも相続財産に含めてお兄さんの相続分を計算し、そこから特別受益の額を差し引いたものがお兄さんの実際の相続分とされることとなります。
たとえば、お母さんが亡くなったときのお母さんの財産は1億円だったが、生前にお兄さんが5000万円の特別受益を得ている場合には、お兄さんの実際の相続分は、(1億円+5000万円)÷2-5000万円=2500万円ということになります。
2)ただし、生前に贈与されたものの全てが特別受益にあたるわけではありません。
贈与が特別受益にあたるためには、①婚姻又は養子縁組のための贈与か、②生計の資本(住宅建築資金など)としての贈与である必要があり、また、遺産の前渡しと言えるほどに高額である必要があります。
さらに、お母さんが、特別受益を相続算産に含めないという意思表示(持ち戻し免除の意思表示)をされていれば、一定の限界はありますが、特別受益であっても相続の際に考慮に入れられないこととなります。この意思表示は明示的なものである必要がないため、特に親子間での贈与の場合、お母さんの持ち戻し免除の意思表示が認められる可能性があります。
3)ご相談の件では、お母さんのご自宅を貰ったり家を買って貰ったという事については、特別受益にあたりそうです。
結婚式や大学の費用については、一般的な費用より相当程度高かったということであれば、特別受益にあたる可能性がありますが、ご相談者の結婚費用や大学の費用との比較も問題となります。
また、特別受益にあたっても、生前のお母さんとお兄さんとの関係などから、お母さんの持ち戻し免除の意思表示が認められる可能性もあります。
このようなことから、特別受益に該当して実際に相続時にこれが考慮される場合は多くはありません。
2016.06.09
商品代金をその転売先から回収する方法②
Q.「当社はA社に電子機器を販売して納入しましたが、代金を支払ってくれません。
A社はこれをB社に転売していますが、B社のA社への支払はまだのようです。
B社から当社に支払ってもらうことはできないでしょうか。」
A.「動産売買の先取特権に基づく物上代位」として、A社のB社に対する売掛金を差し押さえて、B社から貴社に支払ってもらうことができる場合があります。
前回に引き続き、「動産売買の先取特権に基づく物上代位」についてご説明いたします。
1)これは、A社のB社に対する売掛金が、貴社がA社に販売した商品(動産)をA社がB社に販売したことによって発生したものであることを疎明できれば、貴社は訴訟等による時間を要することなく、A社のB社に対する売掛金を差し押さえてB社から回収することが可能となるというものです。
A社・B社の承諾や協力がなくても可能な方法である上、訴訟などの時間や手間のかかる手続を必要としないところから、有用な回収方法と言えます。
しかし、その反面、次のような文書が整うことが必要です。
① 当該商品が、貴社からA社に売買されたことを証する文書
★ 契約書、発注書・請書、納品書、受領書(商品名、品番・型式、数量、単価、代金額等の記載のあるもの)など
② ①の売買代金の弁済期が到来していることを証する文書
★ 契約書、期限の利益喪失を証する書面(期限の利益の喪失に貴社からの催告や通知が必要な場合には、その内容証明郵便と配達証明書)など
③ 当該商品について、A社がB社に販売したことを証する文書
★ 契約書、発注書・請書、納品書、受領書など
④ ①と③の商品が同一であることを証する資料
★◯ ①と③の文書上の、商品名、品番・型式等の記載が、原則として一致することなど
◯ 納品伝票と商品に打刻されるなどした製品番号の一致を示す文書、運送会社の荷受票など
2)①~④のような文書を後から揃えることはなかなか容易なことではありません。
そこで、日頃からこうした文書を整えておくことを意識し、また、A社に対しても、貴社が販売した商品の転売に関する資料の提出や報告を求めておくことが重要ではないかと思われます。
この点、貴社からB社に商品を直送するような場合であれば、③④の文書を整えることは比較的容易ではないかと思われます。
2016.04.21
商品代金をその転売先から回収する方法①
Q.「当社はA社に電子機器を販売して納入しましたが、代金を支払ってくれません。
A社はこれをB社に転売していますが、B社のA社への支払はまだのようです。
B社から当社に支払ってもらうことはできないでしょうか。」
A.「動産売買の先取特権に基づく物上代位」として、A社のB社に対する売掛金を差し押さえて、B社から貴社に支払ってもらうことができる場合があります。
1)A社・B社の承諾・協力がある場合
① [B社の承諾がある場合]
そもそもB社が貴社に支払うことに承諾すればよいのでしょうが、B社はA社から請求されればA社にも支払う義務があり、2重払いの危険があるので、簡単に承諾するとは思われません。
② [A社の協力がある場合]
A社がB社に対する売掛金を貴社に譲渡したり、B社に対して貴社への支払を指示ないし承諾すればよいのですが、そのような場合ばかりとは限りません。
2)判決等に基づく差押
B社に対して訴訟を提起し、判決などに基づいてA社のB社に対する売掛金を差押えた上で、B社から払ってもらうことも可能ですが、ある程度の時間を要します。その間にB社からA社に支払われてしまう恐れがあるので、それを防ぐために予め売掛金を仮差押しておく事も可能ですが、相応の保証金を預託する必要などがあります。
3)動産売買の先取特権に基づく物上代位
そこで、A社のB社に対する売掛金が、貴社がA社に販売した商品(動産)をA社がB社に販売したことによって発生したものであることが疎明できれば、貴社は訴訟等による時間を要することなくA社のB社に対する売掛金を差し押さえてB社から回収することが可能です。
具体的な方法については、改めてご説明させていただく予定です。